・目的と目標
 黄河中流の南に位置する内蒙古自治区鄂尓多斯(オルドス)市は、現在砂漠化が急激に進んでいる地域である。達拉特旗(ダラトキ)を中心に位置する庫布其(クブチ)砂漠も拡大を続ける砂漠のひとつだ。砂漠化を引き起こしている最大の原因は「過放牧」といわれている(詳しくはこちら)。草を食べつくされ砂の移動が始まり、移動を始めた砂漠は強い北西風(季節風)により西から東へ移動し、砂漠化していない農地や草原までも飲み込んでいく。

 
活動当初、地球緑化クラブはこの地域の緑化のパートナーとして、地元の小学校を選んだ。小学校で緑化用の苗木を生産し、その収益金を貧困で学校へ行けない子供たちの学費に当て、また子供の頃から緑に触れて欲しいなど、その理由はいくつもあった。ところが、地元の政策により村の小学校は次々と街中の小学校と併合され、2002年9月をもって私たちのパートナーであった展旦召蘇木(テンダンショウソム)中心小学校も閉校となってしまった。

 当団体は活動のパートナーを小学校から地元牧民に変え、この地(それぞれの牧民)に最も適した緑化活動を続けることにした。この地を脅かしているクブチ砂漠の移動砂丘は、地元の人々もほとんど手が出せない状態だ。政府も移動砂丘の緑化には手を焼いている状態で、現在は移動砂丘を必要としている地元牧民に対して無料で貸し出している。しかし、借りたところで利用手段を知らない牧民たちは無料でもいらないと考えている。

 活動のパートナーを牧民にしたのには理由がある。2001年より羊や山羊を自由に放牧できない「禁牧政策」がとられ、地元牧民は家畜を柵の中で飼う事を余儀なくされた。このため周辺に生えている草を自由に与えることができなくなり(実際は夜中などに放牧そしている)、家畜を飼うスタイルを変更していかなければならなくなった。今後は牧草を育てていくことも重要になっていくと私達は考えたのだ。つまり、現地の人々の生活に溶け込んだ緑化活動、流動砂丘を牧民と共に草原へと変えていく活動に重点を置くことにしたのである。牧民は生活のために草を植える。そしてその結果、流動砂丘は草原へと変っていく。単なるボランティアではなく、その地の産業と結びついた緑化活動。これが私達の目指す砂漠緑化活動である。

 当団体は2004年度、廃校となった展旦召蘇木中心小学校を買収し、ダラトキ砂漠緑化開発基地として改装し活動拠点として使用。砂漠緑化ツアーも現地ではこの基地を宿舎として利用する。
・活動計画
 私達は永久にこの地で活動する気はない。いずれは他の地へ移動するつもりだ。そのためには緑化活動をボランティアで終わらせるのではなく、産業に結びつかせなければならないと考えている。ボランティアで作った森、もしくは草原などはボランティア団体が撤退した後、地元の人々で保護することになる。この活動に十分に賛同を得られていなければ、牧民達は樹木を薪として伐採するなどし再び砂漠化が起こるだろう。つまりいずれの場合も維持することが精一杯で、その緑を拡大することができない。しかしこれが産業と結びついていれば、ボランティア団体がいなくとも緑は拡大していく。

 例えばヤギ・ヒツジを養うために牧草を育てる必要があるのであれば、私達は牧民と共に流動砂丘を固定させ、牧草地へと変える活動を行う。この活動には地元の資材しか使わない。砂の移動をとめる草方格(詳しくは
こちら)の材料にはイネ科の枯れ草や麦わらを使い、牧草の種子や苗はその地にある植物を利用する。こうしてはじめは牧民と共に活動を行い、軌道に乗り始めたら牧民自らの意思で草原を広げていけばよい。草方格の材料は草原が回復してくればいくらでも手に入り、牧草の種ももちろん自分達で収穫することができるようになる。

 これらの活動をその地域一帯に広げていくためには、まずその地で成功者を出してあげなければならない。つまりモデルとなる牧民を何件か作ってあげるのだ。周りの牧民達は彼らに刺激を受け、徐々に真似をし始め同じように流動砂丘を草原へと変えていくようになる。

 ここまでくれば、すでに私たちのようなボランティアの出る幕ではない。私達は別の砂漠化している地域へ移動して行くことができる。この地では私達がいなくても、流動砂丘を草原へと変えていく活動は産業としてその地に残っていく。

 この活動は2003年からはじめ、05年時点で想像を上回る成果を出している。07年までには1件目のモデルを軌道に乗せ、その後、他の牧民達へも牧草地を作る技術をしっかりと身に着けてもらい、流動砂丘を牧草地へとさらに変えていってもらう予定だ。

 これはあくまで予定だが、2020年までにはこの展旦召地区の流動砂丘は牧民達の手で相当の面積が草原へと変っていると思わる。そして、このころを目安に私達はこの地を撤退するつもりである。

 補足だが、流動砂丘を草方格で固定することにより、換金性のある潅木なども植えることが可能になる。こういった植物も臨機応変に混ぜ合わせ、それぞれの牧民に最も適した技術を伝えていくつもりだ。なお、05年現在、最も換金性のあると思われる植物はマメ科の牧草「羊柴(ヤンツァィ)」である。この種子が今の段階では非常に高く販売することができる。この他グミ科の潅木「沙棘(サージー)」、柳科の潅木「沙柳(サリュウ)」なども換金性の高い植物といえる。

 
<2007年度>
<南沙地区>
−潅木植栽−
・羊柴(ヤンツァイ)・・・200,000本
・沙棘(サージー)・・・原種200,000本、ロシア改良種50,000本
・沙柳(サリュウ)・・・300,000本)
−防風林−
・ポプラ・・・15,000本
−草方格−
・12ha
<基地敷地内>
−温室栽培−
・品種未定
−畑栽培−
・トウモロコシ・・・2.0ha
−農場−
・乳牛飼育
−施設工事−
・砂漠緑化学校教室新設 他
−砂漠緑化ツアー受け入れ−
・4隊
年 度 項    目 内    容 詳    細
2001
年度
ポプラによる防風林作り ・植栽数:約5,000本 ・4月実施
・北西の強い季節風から畑を守るために畑
(注1)西側に植林
灌漑用井戸掘り ・深さ:75m ・6月実施
砂漠緑化ツアー(2隊) ・草方格施工 他 ・隊員数:合計12名
(注1)ここで言う畑は地球緑化クラブ緑化活動パートナーの展旦召蘇木中心小学校の持つ畑。2002年度まで「畑」はこの場所を指す。
2002
年度
防風林の補植(ポプラ植林) ・植栽数:1,500本 実施:4月
ポプラ挿し木(苗作り) ・挿し木数:70,000本 実施:4月
・「苗木を育てて学校へ行けない子供達を学校へ」活動の一環
防風林及び苗木の剪定 ・苗木や防風林のひこばえ剪定 実施:7月
ポプラ苗木の生育調査 ・活着率:60%
・樹高:平均250p
調査実施:8月
・畑を開拓して1年目、場所によっては枯死するものもあった
砂漠緑化ツアー(2隊) ・草方格施工 他 ・隊員数:合計45名
2003
年度
草方格施工 ・面積:3,000u以上
 (治砂効果面積:12,000u以上)
・実施:8月〜9月
・流動砂丘
(注2)にて牧民中心に実施
砂漠緑化ツアー(2隊) ・草方格施工 他 ・隊員数:45名
TV撮影 ・リンゴ園作り
 (植栽数:250本)
・りんご園ポプラ防風林
 (植栽数:200本)
・リンゴ園内水車建設、設置
・番組名:日曜ビッグバラエティ「世界の田舎で汗だく!泥んこ!ボランティア」
・放送:12月7日(日)20時〜22時
・放送局:テレビ東京他全国ネット
・出演:高嶋政宏さん、地球緑化クラブスタッフ、地元牧民 他
(注2)ここでいう流動砂丘はクブチ砂漠の一角に位置し、後の「ダラトキ砂漠緑化開発基地」の南2kmに位置する。
2004
年度
草方格施工 ・面積:3.5ha ・実施:11月
・南沙地区
(注3)にて牧民中心に実施
砂漠緑化ツアー(4隊) ・草方格施工 他 ・隊員数:30名
潅木植栽 ・沙棘
 (植栽数:15,000本)
・沙棗
 (植栽数:15,000本)
・沙柳
 (挿し木数:30,000本)
・緑化基地内草方格内へ植栽
・いずれの種も換金性のある潅木
花・野菜の栽培
(株式会社ムラカミシードからの委託)
・マリーゴールド
 (株数:15,000株)
・クリサンセマムノースポール
 (株数:100株)
・スイートコーン
 (株数:400本)
・播種:5月下旬
・採種:10月以降
旧達拉特旗展旦召蘇木中心小学校買収及び改装工事 ・契約年数:30年
・土地面積:約3ha
・主な建物数:10棟
・周辺緑化地を含め「達拉特旗砂漠緑化開発基地」と改名
・施設内用:ツアー宿舎9室、スタッフ事務所兼宿舎、砂漠緑化資料室、大食堂、水洗トイレ、シャワー室 他
・工事は未完成、05年引き続き行なう予定
温室建設(1棟) ・面積:約300u ・株式会社ムラカミシードが資金提供
・冬場の花の採種を行なうが目的
(注3)03年度の「流動砂丘」と同地。04年度より「南沙(地区)」と改名
2005
年度
砂漠緑化事業(南沙地区)
灌木植栽 ・沙棘:植栽数11,500本
・羊柴:植栽数33,400本
・実施:3月31日〜4月16日
草方格施工 ・面積:4.3ha ・実施:第1期7月、第2期11月
農業開発事業
農場造成 ・造成面積:1.2ha ・実施:4月18日〜25日
マリーゴールド採種 ・面積:0.4ha
・生産量:21.3kg
・実施:3月18日〜11月15日
その他 ・大豆:0.2ha
・緑豆:0.2ha
・スイートコーン:0.1ha
・カボチャ:0.2ha
・その他:0.1ha
・実施:3月20日〜9月7日
ダラトキ砂漠緑化開発基地改装工事
客室工事 ・工事部屋数:9室 ・工事実施:3月2日〜22日
その他施設 ・スタッフ宿舎:3室
・大食堂:1室
・砂漠緑化資料室:1室
・水洗トイレ:男女
・シャワー室:共同
・添乗員室:2室  他
・工事実施:3月10日〜24日
砂漠緑化ツアー受け入れ
一般隊 ・第8次隊
・第9次隊
実施:8次隊5月27日〜4月1日、9次隊6月19日〜26日
参加者:8次隊10名、9次隊19名(うち6名北京留学生) 合計29名
大学生協隊 ・第1次隊
・第2次隊
・第3次隊
実施:1次隊5月1日〜5月6日、2次隊8月14日〜22日、3次隊8月28日〜9月5日
参加者:1次隊5名、2次隊12名、3次隊12名 合計29名
状況:前年「ダラトキ砂漠緑化開発基地」を購入した関係で、施設の修復工事に力を入れた。予算の多くをこの改装日へまわしたが、それでも多くの方々の協力により充実した緑化活動が行えた。ツアーも大学生協と提携することにより多くの方賀を迎えることができ、砂漠緑化活動や砂漠化の現状を理解していただける機会を多く設けることができた。来年度は工事が不十分であったトイレとシャワー室の工事を行い、開発基地の工事が保護終わる。また、緑化活動も現地の人達がある程度の流れや成果を確認できたので、これから幅広く活動していく方針。
2006
年度
砂漠緑化事業
潅木植栽 ・沙棘原種:62,000本
・羊柴:41,600本
・沙柳:300,000本
・実施:沙棘・羊柴3月下旬〜4月中旬
・沙柳:11月
草方格施工 ・面積:164,800u(16.48ha) 実施:8月上旬〜10月下旬
防風林 ・ポプラ:10,200本 実施:4月中旬
牧草播種 ・100,000u(10ha) 実施:6月下旬〜9月上旬
道路補修工事 ・約500m ・実施:10月中旬〜下旬
農業開発事業
温室栽培 ・日本出荷用花卉種子採種 ・実施:前年9月下旬〜6月中旬
畑栽培 ・羊柴育苗:15,000株
・ヒマワリ:10,000株
・実施:羊柴4月〜、ヒマワリ5月〜9月
ダラトキ砂漠緑化開発基地
宿舎改装工事 ・暖房工事
・シャワー・水洗トイレ・洗面所増設工事
・実施:暖房工事3月、増設工事6月
砂漠緑化ツアー関係
一般隊 ・第10次隊
・第11次隊
・第12次隊
実施:10次隊3月26日〜4月1日11名、12次隊6月24日〜7月1日10名、12次隊9月4日〜9月9日6名
特別隊他 ・東海大学アジア海外研修
・学生長期ボランティア
・実施:東海大学隊8月30日〜9月4日27名、長期ボランティア夏季2名
状況:本年度は助成金や募金、基金のおかげで例年以上の活動ができた。特に夏以降は助成金が入り、草方格・沙柳植栽とまとまった活動ができ、いっきに緑化が進んだ。今後も助成金や基金などを活用し、活動の拡大を目指す。だが、春に植栽した一部は6月の旱魃で枯死したものが出るなど、すべてが順調にいったわけではなかった。ツアーは東海大学の研修ツアーが来るなど、年間通して多くの方がきてくれたが、各ツアーの参加者数が少なく、ツアーとしての緑化活動は予想を下回った。